問題を解決することがデザインである

問題を解決することがデザインである
Pocket

デザイナーという職種に就いていると、実に幅の広い分野で仕事ができるということに喜びを感じます。「果たしてどこまでがデザイナーの仕事なのか?」その答えは、デザイナー一人ひとり違った考えを持っていることだろうと思います。それはきっと本人次第で、決められた枠の外側にまで携わることも可能なので、その人自身が「私の仕事はここまで」と捉えるラインまでがその人の仕事になってくるのでしょう。


そんな中で多くのデザイナーが、世の中に生み出しているデザイン制作物ですが、チラホラ「これは果たしてデザインと呼べるのだろうか?」疑問視してしまうようなものも確かに見受けられます。

なんちゃってデザイナーになっていないか?

では、デザイナーという肩書の中で、「私は一人前のデザイナーです。」と胸を張って言い切れる人が、どのくらい存在しているものなのでしょう。PCのデザイン系ソフトを使える、何かを作るのが好きで得意、というだけで、デザインができると勘違いしている“なんちゃってデザイナー”が実際は多いような気がして、どこか「それは違うんじゃないか?」そう、悲観してしまいます。

デザインオフィス「nendo」の代表、佐藤オオキさん執筆の『問題解決ラボ(ダイヤモンド社、佐藤オオキ著)』を読んでいくと、なにわともあれ自分自身もケツを叩かれる思いになっていきました。

佐藤さんのように正直であり鋭く冷静な視線で、デザインというものと向き合うことはなかなか出来ない世界ですが、やはりこのような人を、正真正銘のデザイナーと呼ぶべきだと身に染みて感じました。また、世間が広い意味で解釈しているデザイナーという人は、大多数が“作業をする人”でしかないというように残念な気持ちも湧いてくるのです。

小さなことから改善できるかを考える

これまでに、様々な空間や商品を手掛けてきた佐藤さんが、日頃から考えていることや、「発想力」「思考力」、サラっと言ってのけるヒントの裏に、並々ならぬ努力の積み重ねが垣間見えてきて多くのことを学ぶことができます。大きな変革を起こすというような発想ではなく、単純に目の前の困ったことをどうすれば改善できるのかを考える。そういった視点で著者はこのように簡潔に述べています。

新しい発想を生み出す=問題を解決するということ

ただ、闇雲に新しいことを考えていれば良いのではなく、誰かの抱える問題を解決するために必要なツール・方法を生み出すということが、本来の「デザインの目的」である。ということなんですね。

「誰も見たことがないもの」は、「誰も求めていないもの」と紙一重。
理想は「本来そこにあるはずなのに、なぜかないもの」を「補充する」くらいの感覚です。

あるひとつの物を改良するためには、多面的な角度からその特徴や問題点などを探る必要がありますが、あれもこれもとフォーカスを移動させてしまうと、かえっていくら時間があっても目標の場所に辿りつけない可能性が高くなってしまいます。

ものごとを「凝視する」ことは、それ以外のものを「無視する」ことと同じになる。

惑わされない視点

一点集中という言葉もありますが、何かに着目するということはそれを取り囲む様々な要素を一旦無視し、ひとつのものを単体として観察しなければ意味がありません。しかし、「それ以外のものを無視する」ということは、気にしなくて良いという単純なことでもなく惑わされない、という考えを持つべきだというヒントになります。

デザインに関わる仕事をしている方に限らず、何か問題を抱えている人が解決の糸口を見つけ出したいときなど、自分に持ち合わせていなかった視点や、今まで見ることのなかった角度など、そういった視野を広げるためのヒントになるので是非読んでみてください。

コメントを残す

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください