ふたりの関係性が親密であればある程に、ほんの少しのかすり傷が致命傷と成りうることがある。心を許した相手だからこそ、信頼という太い絆が凶器となって、自らを危険に晒す危険性を孕んでいる。ひとつの疑惑が、次々と細胞を苦しめ、切…
子供と大人のそのあいだ
大人になる瞬間など存在しないもの かつて自分が子供だった頃、子供という枠組みと、大人という外の世界にはどこかに絶対的な境界線というものがあって、いつかそのラインを超える時が否応なしにやってくる。「はい、ここからあなたは大…
肯定された世界を
世の中の複雑な事をいったん頭から切り離して読むべき物語です。こういった純愛物語を久々に読むと、世の中きれいごとばかりじゃない。ちょっと現実的ではないよね。なんて感想をついつい述べてしまいそうになるけれど、こういったわかり…
言葉にしなくてもいい
言葉にすると意味が薄くなってしまうことがある。 頭で考えていることがすべて相手に伝わってしまうほど、面白くなく味気ないことはないと思う。『アルジャーノンに花束を〔新版〕(ハヤカワ文庫NV、ダニエル・キイス著)』 「なにも…
戦友
「戦友ではなく味方でいてほしい。」 久々に名セリフに出会った感がありました。『家族の言い訳 (双葉文庫、森浩美著)』 よく夫婦を戦友に例える人がいるでしょう。 僕はちょっと違う意見なんだな。 妻は一緒に戦ってくれなくても…
それぞれの闇
それぞれの旅。人生を旅に例えることがよくありますが、きっと旅とは距離や時間の問題ではなく、結局のところ自分自身と向き合うことが目的なのかもしれません。『魔法のことば (文春文庫、星野道夫著)』 ひとたびまったく違う世界に…
物事の判断
結果よりも思いの大切さ。 成功か失敗か、そんなことは二の次で大切なことはどう思ったのか?なのかもしれません。『わたしを離さないで (ハヤカワepi文庫、カズオ・イシグロ著)』 少なくとも、できることはすべてやったという思…
山稜をひたむきに歩く君の姿
山は、人を魅了すると同時に飲み込んでしまう怖さと合わせ持つ。『遭難者(文藝春秋、折原一著)』 目を閉じると、岩に挑み、雲をかき分け、山稜をひたむきに歩く君の姿が瞼の裏側に浮かんできます。