数式

数式

「ぼくの記憶は80分しかもたない」 鉛筆のかすめた跡からは情熱を、 バツ印には焦りを、 力強く引かれた二本のアンダーラインからは確信を。 そしてあふれ出る数式は、 私を世界の果てへと導いてくれた。 数字を通して物語は進ん...

世間のなかの無意識

世間のなかの無意識

日比谷公園を舞台に綴る、日常のなかのやり取りが描かれている。何かを期待しても大きな何かは起こらない。誰にでもあるような生活とこの世界を少し距離を置いて眺めている、そんなものがたり。 公園のベンチで長い時間ぼんやりしている...

家族について考えたくなったら・・・

家族について考えたくなったら・・・

若い時代に読んでみるのと、時を経て家庭を持って再読してみると違った後味を感じることでしょう。人生を歩んできた分だけ、家族であったりその他の言葉の受け取る重さが違うとはこういうことを言うのだと思いました。 『キッチン(角川...

孤独について考える

孤独について考える

「孤独」と呼ぶべきか「孤高」と表現すべきか判然しないが、著者独特の人物描写に引き込まれる作品です。 宝くじに当たった河野は会社を辞めて、碧い海が美しい敦賀に引越した。 何もしないひっそりとした生活。 そこへ居候を志願する...

心中

心中

作品は19才の少女と精神を病んだ33才の恋人が、ドナウ川で心中した顛末を描いたノンフィクション。常に薄曇りがかかっているような話の展開に読み手の頭上に重くのしかかる。 私はなぜ人間にパンを与えることができなかったのに、 ...

家訓

家訓

長編小説であるにもかかわらず、それを感じさせることのない展開と言葉の可憐さ、江國香織さんの使う言葉は彩りが含まれ、毒を持ち、それでいて美しい。 語り手がその都度、入れかわり、それぞれの視点で流れをつくってくれている。ほと...

好きになることの代償とともに

好きになることの代償とともに

単なる恋愛小説では物足りないと感じる人にはお薦めの一冊です。映画化にもなっており、婚約者と愛人という設定も今の時代を象徴しているかもしれません。 どんなに好きでも、どんなにいとおしくとも 添い遂げることができない人もいる...

幻(まぼろし)

幻(まぼろし)

かつてNHK-BSで放送されたドキュメンタリー番組撮影時での出来事が綴られたフォトエッセイになっています。ソビエト、アメリカを交えた内容になっています。 俺には俺自身のことがわからない。 いつも世界で一番不可思議なのが自...

喪失の果てに

喪失の果てに

記憶というものは生きている者をいつまでも離さない。多くの場合、過去が美化されるように消えてしまったものは、いつまでもあの時のまま私たちのどこかにこびりついて離れない。切なくも温かく透き通った気持ちになる一冊です。 ふたり...