日比谷公園を舞台に綴る、日常のなかのやり取りが描かれている。何かを期待しても大きな何かは起こらない。誰にでもあるような生活とこの世界を少し距離を置いて眺めている、そんなものがたり。
公園のベンチで長い時間ぼんやりしていると、風景というものが実は意識的にしか見えていないものだということに気づく。波紋の広がる池、苔生した石垣、樹木、花、飛行機雲、それらすべてが視界に入っている状態というのは、実は何も見えておらず、何か一つ、たとえば池に浮かぶ水鳥を見たと意識してはじめて、ほかの一切から切り離された水鳥が、水鳥として現れるのだ。
公園って何もしなくても咎められない
そんな、あたりまえのようで不思議な場所。
『パークライフ(文春文庫、吉田 修一著)』