それを咎めるでもなく、全てを受け入れ、終わりの見えている関係をわかっていながらも恋をしつづける「わたし」。
別れを切り出されてからの「わたし」の落ち着かない精神状況を書き綴っている。
”サイトウさん”は「わたし」のことを、子供が居ない夫婦が猫を飼うとか、
恋人のいない女の子が大きなぬいぐるみを抱いて寝るとか、
きっとそんな感じで、恋とは違う感覚で付き合っていたんだと思うずっと一緒にいた人がある日、突然居なくなるってどんな感じ?
輸入雑貨のカタログをパラパラと捲りながら尋ねると、
大きなテーブルのところに赤いペンで印が付いているのを見つけてしまう
これから先の二人を無視するかのようなかつての幸せの痕跡
傷つき立ち止まり、過去に引きずられる「わたし」。
道に迷いながら、わずかに前のめりになっていく姿勢が
ゆるく、また暖かく映し出されています。
『生まれる森(講談社文庫、島本理生著)』