1999年、日本では三万人以上の人々が、自らの命を絶ちました。その中には、多くの若者が含まれています。若い世代と言われる僕達や未成年が、悩み苦しみ、耐え切れず命を落としているこの時代背景。皆が何を思い、何に悩み、何に傷つき、何を感じ、命を絶ってしまったのか…。自殺の真実、決して報道されることのないありのままの現実、残された遺族や友人の悲しみと、決して癒されることのない深い心の傷。死を決意するほどに悩んでいたことにすら、気付いてあげることができなかったと残された人たちは、痛々しく自分を責めています。そんな重荷を遺族に一生背負わせてまで、何故、彼らは自殺を選ばなければならなかったのでしょうか。実物の「遺書」および「日記」を掲載し、その遺書への返信として綴る遺族の「手紙」。自殺の実態とその後、社会問題、行政、学校と遺族の間に浮かび上がる深い溝を記した現実。生と死の狭間で揺れる若者五人の葛藤を同世代の目線で描き、いじめや鬱による自殺の真実に迫っている。命の価値、家族のあり方を問う。『遺書(幻冬舎文庫、verb著)』
息子「あのさ、もう僕に気を遣わなくていいよ」
母「何を言っているの?
息子「ねぇ、母ちゃん、僕が死んだら悲しむよね」
母「当たり前でしょう」
息子「みんな悲しむよね」
母「それはそうよ。悲しまないわけないでしょう」その直後、彼は自宅のマンションから飛び降りた…。
この本は元々「サンクチュアリ出版刊」であったが、加筆修正、再構成し「幻冬舎」から出されています。
報道メディアの取材とまた違うリアルな内容、死への経緯、その後の遺族の心理状況を切実に記してあり、遺書の現物(直筆)も掲載されている。そして、その命を絶つ前に残したメッセージに対して、両親、兄弟、友人たちの言葉。息子の死を年月をかけ受け入れ、真相究明に突き進み学校側と終わりのない対立し続ける父親。逆に記憶の棚からなかったことにと消し去ろうとする苦しくも儚い思い。悲しみや後悔の念を抱き、それでも、前に進んでいかなければならない現実。自殺を肯定するでもなく、否定するでもなく、何が正しくて、何が間違っているか。それはもうこの世にはいない、本人にしかわからないであろう心理は永遠に確かめることはできない。
目を背けることができず、苦しくなった。絞り出る涙と苦さがいつまでも続いていく。是非、読んで欲しい、そして大切なことを思い出して欲しい。同じ時代に僕らが出会い、笑い、悩み、苦しみ、涙した奇跡を。
実際に今、あなたの周りにも色々なことに悩んでいる友人がたくさんいると思う。それは小さなことかもしれない。傍から見ればなんてないことかも知れない。だけど、本人にしてみれば苦しくて苦しくて壊れてしまいそうなことかもしれない。それに気がついてあげて欲しい。みんなたくさんの荷物を背負って苦しみに耐えている。抱えきれない荷物を抱え込み、歯を食いしばって生きている。言葉にしないサイン。本当に悩んでいる人の多くは、それを口に出さなかったりもする。表に出せない本音を、引き出して共有できるように。誰かに寄りかかって、寄りかけて生きている。強い部分も弱い部分も両方持って、笑っている。笑顔の裏に多くが隠れている。見えているものと見えていないもの、すべてを見てあげよう。見せたくない恥ずかしい自分をさらけ出し、人は強くなれる。
以前、私は目の前で友人がリストカットをした。それまでに何度か手首の傷を見て僕は兆候に気がついていた。でも、何が原因なのかは咎めなかった。聞かれたくないだろうと思って。ある朝、目が覚めるとそいつは浴槽に水を張り、手首をカッターで切っていた。見たこともない真っ赤な光景。僕は言葉がでなかった。何をするべきか、それすら何も思い浮かばなかった。うずくまっている背中を抱え込むと、そいつは寝ていた。あたかも心地よく目覚めた朝のように、目を開くと至って冷静で正直唖然とした。「ごめん、またやってしまった。」そういうと何事もなかったかのように浴槽の栓を抜いた。慌てて救急車を僕は呼んだ。幸い命に別状はなく、今は元気に過ごしている。しばらく絶って、それまで聞くことの出来なかったその経緯を聞いた。一日に昼と夜があるように、私の中には白い私と、黒い私が存在するみたい。普段はなんでもないけれど、その移り変わるグレーな顔を覗かせるとき、とても不安になる。ひとりで居るのがとても恐くて、自分ではそれを止められない。そして、黒い私が手首を切っている。そのときの記憶はまったくない。自分でもどうすればいいのかわからない。明らかな二重人格障害みたい。でももう長い付き合いだからね、とそいつはケロッと述べた。原因は育った家庭環境にあるようだった。必死に努力して克服しようと試みたけど、中々うまくいかず、苦しんでいた。元の自分に戻りたいと思うけど、元がどうだったかさえ今はわからない。逃げてもしょうがないし、時間をかけて強くならなきゃ。そういうと白いそいつははにかんだ笑顔で笑った。それを見て僕は、苦しくて泣いた。苦しくて苦しくて何も言ってやれずに、泣いた顔で笑い返してやるしかできなかった。
君がいるだけで世界は違う
君を想う人は普段気付かなくても、たくさんいるよ
共に笑い、共に悩み、共に泣き、共に共に生きていこう
辛く苦しい毎日から目をそらさずに
それ以上のもので未来を埋め尽くすように
まだ、僕らは全てを知らない
小さな世界に疲れているだけ
強くなんてならなくてもいいんじゃない
ゆっくり ゆっくり
梅干しでもかじってさ
酸っぱ過ぎることに笑おうよ
たまには裸足で外に出かけたりしてさ
足の裏が痛くて 小石が怖くて
なかなか前に進めないもどかしさに笑おうよ
いつだって君は此処にいて
いつだって僕も此処にいる
いつだってみんな此処にいて
狭い世界でひしめき合ってる
君は僕にとって必要な存在だ
その証拠に
偶然じゃなくそれは必然的に
こうして出会えたのだから
授かった命に感謝して
とにかく今は笑おうよ