ちょっと前にどこかで聞いたことのある言葉を思い出しました。
「あなたは何をしている人ですか?」と質問されて、「会社名で答える奴にはなるな。」・・・たしか、このような言葉だったと思います。
社会には、職業という枠で捉えると「会社員」と呼ばれる人たちが数多く存在しますが、一概に「会社員」と言っても、その括りがあまりにも曖昧過ぎて結局のところ、会社員という存在定義がイマイチ良くわからなくなっている気がします。
自営業ではない。学生でもない。無職でもない。
どこかしらの企業に属して、何かしらの仕事をしている程度の不確かなニュアンスでしかなく、結局のところ、その人が実際に何をやっているのか、「会社員」という表現だけでは、ほとんど見えてこないのが事実です。故にそのような回答は、ほとんど意味がなくなってしまう気がします。
だからといって、それなりに知名度のある有名企業の名前を出されても、実際にどのようなことを任されて仕事をしているのかもわかりません。それなりの企業に勤めているということを表現するのは、何かしらの自信の表れなのかもしれませんが、質問者はあなたの会社を知りたいのではなく、あなた自身を知りたいのです。それでも実際には、先ほどの質問をされて、会社名で答える人が案外多いのではないでしょうか。
端的に漠然としたイメージを与えることに関しては良いかもしれませんが、そのように回答をする人は、ひとりの人として付き合う前に、必ず「○○企業の○○さん」という肩書や名刺のような印象が強く残り、あなた自身である「○○さん」という印象は深く記憶に残らないような気がします。
本書『コンサル一年目が学ぶこと(ディスカヴァー・トゥエンティワン、大石哲之著)』では、コンサルティング事業に関する内容に限らず、様々な職種の誰もが仕事をしていく中で、どのように論理的に物事に向き合えば良いのかを紹介しています。身近な事柄において少し視点を変えることで、新たに気付かされる事や、物事の本質を見つけることの参考になるものが数多くありました。
消費者目線ではなく生産者目線になれ!
社会人は消費者ではなく「生産者」。いかに会社に貢献するかと、その先の顧客の満足を考える。会社に入っても消費者のままの人がいます。「会社が○○してくれない」「会社に○○が足りない」でも、社会人になったあなたは、消費者の目線のままでいないでください。あなたは会社のお客様ではありません。お金を払っているのはあなたではなく、会社なのです。
「会社が○○だから我慢している。」とか「会社が○○をしてくれない。」という不満を確かに良く耳にします。それこそが会社に対して消費者であることの表れでしかありません。時間や能力を奉仕し、対価を得ているという意識は間違いではありませんが、あくまでお給料というお金を支払っているのは会社です。経営サイドに立ってみればわかりますが、消費者ではなく生産者目線でいなければならないということは、当たり前のことなんですね。
その作業は誰の為のものであるかを再確認する。
あなたのやっている作業は、作業のための作業ではなく、クライアント問題を解決する為に役に役立つものですか?クライアントが「価値がある」と思わなければ、あなたがどんなに時間を費やしても、それは単なる自己満足に過ぎません。
作業をすると言っても、ただ単純に納期に間に合わせるためであったり、自分の欲求を満たすためであったり、そのバランス感覚を間違うと独りよがりなものになりかねません。アートや芸術の世界では、アーティストとデザイナーでは大きく違いがあるものです。自己表現を突き通すあまりに、クライアント様の要求を無視したものを作ろうとしたり、求められているものから随分とかけ離れたものを提案しようとしたり、思わず自己満足になってしまったりしては、本末転倒になってしまいます。
大切なことは何よりも考えること。
仕事をしていく中で、何かを作り上げるときはまずその内容を調べることからはじまります。現状の把握・問題点の洗い出し・改善策の立案など、実際に作業をする前にそのプランニングなどを行う時間が大半を占めることになります。そして実際に手を動かして作業をし形にしていくことは、最終的なものであり全体の半分にも満たないものです。
このように、ある問題点に対して考えに考えを重ねた結果、これそれをどうするという結論が導かれます。
ビジネス能力を向上させるのは、情報量ではなく、考えること。
著者はこのように述べており、いくつもの情報をかき集めて知ったような気になってしまってはいけないと強く主張しています。誰かの考えを書き記した書籍や新聞・ネットの情報などを鵜呑みにせずにきちんと自分の考えを持って仕事に向き合わなければ、いつまで経っても成長することはできません。考えること。それは誰にでもできることであり、考えることをやめてしまえば脳も発達することをやめてしまうことなってしまうのではないでしょうか。